「東芝問題」を名経営者“メザシの土光さん”ならどう考える?
【連載】「あの名言の裏側」 第2回 土光敏夫編(1/4)土光氏の考える“根性”とは?
2015年、総合電機メーカー大手の東芝で不正会計が発覚、世間に大きな衝撃が走りました。そのカラクリや経営トップの関与といった詳細が次々と明るみになるにつれ、東芝に対する消費者の失望感もどんどん色濃くなっていきました。筆者はメディアで俎上に載せられる一連の醜聞を追いながら、こんなことをぼんやりと考えていました。「もし土光さんがこの出来事を知ったら、一体どんなことを口にしただろう」ーー。
根性とは、要するに
「仕事への欲の強度と持続力」
だといえよう
──土光敏夫
土光敏夫(1896~1988年)氏。石川島播磨重工業(現・IHI)の社長、東芝の社長・会長、日本経済団体連合会(経団連)の会長といった要職を歴任したほか、1981年、鈴木善幸内閣のもとで立ち上げられた「第二次臨時行政調査会(いわゆる土光臨調)」において辣腕を振るいまくったことでも知られ、戦後日本の経済史で伝説的に語られているリーダーのひとりです。
質実剛健、質素倹約、無私の精神、清貧、執念の人──土光氏のことが語られるときに持ち出されるキーワードは少なくありません。「ミスター合理化」「行革の鬼」「怒号敏夫」「荒法師」「土光タービン」などなど、さまざまなあだ名で評された人物でもあります。
語り継がれている名言も枚挙にいとまがありません。そのなかでも代表的なもののひとつが、こちら。
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社員は三倍働け、重役は十倍働く
私がこの会社(筆者註:東芝)に来たときに発した言葉の一つだが、どう誤り伝えられたのか、「社長が重労働を強いるのか」という声があがった。その節私は、肉体の重労働はやらないが、頭脳の重労働はやると答えたのだった。
日本人は勤勉だという。私も否定しない。(中略)しかしその勤勉は、どちらかといえば、肉体の勤勉だったのではないか。そうだとすれば、これからは頭脳の勤勉が求められることを、声を大にしていいたい。
(中略)
頭脳は使えば使うほど良くなる。肉体のように使い減りはしないのである。(『経営の行動指針』より)
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1965年(昭和40年)、土光氏は経営難に陥っていた東芝の再建を託される形で、社長に就任します。そして、あらゆる領域で合理化を推進し、わずか1年ほどで経営を立て直してしまうのですが、徹底したのは役員、社員それぞれに対する意識改革でした。